ヘパリン類似物質とは?効果や使い方を解説
乾燥による繰り返す肌あれ、かゆみや赤みは、日常生活の快適さを大きく損ないます。その改善に医療現場で広く用いられているのが「ヘパリン類似物質」を配合した治療薬です。
高い保湿力に加え、抗炎症作用や血行促進作用を備えており、乾燥肌や手あれなど、幅広い肌トラブルの改善に役立ちます。
本記事では、ヘパリン類似物質の特徴や働き、一般用医薬品の剤形ごとの選び方、効果的な塗り方、使用時の注意点や副作用までを詳しく解説します。
01ヘパリン類似物質とは?
ヘパリン類似物質は、「保湿」や「皮膚の炎症・乾燥の緩和」を目的に使用される成分です。ヘパリンとヘパリン類似物質には明確な違いがあります。ヘパリンとヘパリン類似物質の違いについて詳しく見ていきましょう。
ヘパリンとヘパリン類似物質の違い
「ヘパリン」は肝臓(hepar)に由来する成分で、体内では血液が固まるのを防ぐ役割を果たします。この働きが医療にも応用されており、血栓症の予防や治療、血流全体に作用するのが特徴です。
一方で「ヘパリン類似物質」は、名前のとおりヘパリンと構造がよく似た化合物です。化学的性質を利用して肌への吸水性や保水性を高める働きを持ちます。そのため、皮膚の乾燥や手あれの改善を目的としたクリームやローションをはじめ多くの剤形に配合され、外用薬として活用されています。
02ヘパリン類似物質の作用機序・薬効薬理
ヘパリン類似物質は、もともとヘパリンに似た構造を持つことから誕生した成分ですが、その働きは「肌にうるおいを与える」「炎症を抑える」「血流を良くする」という3つの作用に整理できます。こうした性質により、皮膚科領域を中心に幅広く利用され、乾燥肌の治療から外傷後の治療補助まで多彩な場面で処方されます。
保湿作用
ヘパリン類似物質は水分を引き寄せ、角層内部で水分を保持すること、肌のうるおいを保つことができます。冬の乾燥やエアコン使用による環境要因で肌があれやすいとき、あるいは季節の変わり目に起こるトラブルの改善に役立ちます。単なる一時的なうるおい補給にとどまらず、皮膚バリア機能を改善させ、肌本来の水分保持機能を底上げする点が大きな特長です。
抗炎症作用
ヘパリン類似物質は、炎症を鎮める働きも持っています。乾燥肌に伴うかゆみや赤み、ひび割れといったトラブルは、放置すると悪化や慢性化につながります。ヘパリン類似物質は、皮膚バリア機能の低下や炎症を伴う肌あれのケアに用いられます。炎症による赤みやひりつきを落ち着かせながら、肌本来の水分保持機能を補い、乱れたバリア機能を立て直すことで、肌状態を正常に近づける作用が期待できます。繰り返し起こる肌あれにも使用され、症状が続いている肌のコンディション回復をサポートします。
血行促進作用
その他には、皮膚の血流を改善する作用です。血流が滞ると代謝や修復が進みにくくなりますが、ヘパリン類似物質を用いることで循環がスムーズになり、細胞の再生が活発になります。そのため、打撲や捻挫でできた青あざ、血腫(内出血)、軽度の火傷、さらには手術後の瘢痕部位などに応用されることがあります。血行促進により酸素や栄養が届きやすくなるため、回復を後押しする効果が期待されます。
03ヘパリン類似物質配合の剤形毎の特徴
ヘパリン類似物質を配合した一般用医薬品には、クリーム・ローション・ジュレ(ジェル)など複数の剤形があり、それぞれの性質や使い心地が異なります。患部の状態や使用部位、好みに合わせて選ぶことで、より効果的に皮膚症状の改善を図ることができます。
ヘパリン類似物質を配合した一般用医薬品の剤形別特徴について詳しく見ていきましょう。
クリーム
肌にのばすとしっとり感が広がりながらも重さを感じにくく、保湿力の高さと扱いやすさを兼ね備えています。乾燥の強い部位に適しており、軟膏のようなべたつきが気になるかたにも向いています。ただし、ジュクジュクしている部位や傷がある部位には適さない点には注意が必要です。
油中水型(W/O)と水中油型(O/W)の2種類があり、処方によって仕上がりや使用感に違いがあり、皮膚の状態や好みにより使い分けられます。
油中水型(W/O)は、水分を油分が包む構造のため保湿力が高く、乾燥が強い部位のケアに適しています。一方で水中油型(O/W)は、油分を水分が包む形で軽い塗り心地になり、日常的に使いやすい質感です。軟膏ほどのべたつきが苦手なかたでも取り入れやすいのがメリットです。
ローション
水分が主体のため、広い範囲にもむらなく塗り広げられます。水分が多く気化しやすいため、汗をかきやすい部位にも使いやすいことが特徴です。有毛部や背中などにも使いやすいタイプです。
ジュレ(ジェル)
透明でみずみずしい感触が特徴で、なじませるとすぐに軽やかに浸透していきます。日中でもべたつきにくく、衣服に触れても気にならないため、外出前やビジネスシーンでの使用に適しています。
フォーム
プッシュすると泡状で出てきて、肌にのばすうちに液状へと変化します。油分が少なくさっぱりとした感触で、短時間で広範囲をカバー可能です。べたつきが苦手なかたや、時間をかけずに使いたい場面に適したタイプです。
04ヘパリン類似物質配合治療薬の使い方
ヘパリン類似物質を含む外用薬の効果を十分に発揮させるには、適切な量をしっかり浸透させる必要があります。そのためには塗布方法やタイミングを意識することが大切です。
まず準備として、手を洗って清潔な状態に整えます。そのうえで、薬を指先や手のひらにとり、肌をやさしくなでるように広げましょう。ゴシゴシこするのは刺激となるため、皮膚のしわの流れに沿ってスッとなじませるのがポイントです。
使用するタイミングは入浴後がベストです。入浴によって柔らかくなった角層は水分を含みやすく、薬の浸透もスムーズになります。特にお風呂上がり5〜10分以内に塗ると効果的です。また朝のお着替え時に塗ることもおすすめです。特に乾燥する秋〜冬の朝は、肌が乾燥していることが多いです。ヘパリン類似物質を含む多くの外用薬は1日2回、十分量を塗布することで効果を発揮します。
塗布量の目安には「FTU(フィンガーティップユニット)」という単位が使われます。口径5mmのチューブでは成人の人差し指の先端から1つ目の関節の長さまで出した量を1FTUと言い、約0.5gに相当します。これは大人の手のひら約2枚分に相当します。クリームの場合はその1FTUを基準にし、ローションなら1円玉大が目安となります。
塗布後は、肌が軽く光沢を帯び、ティッシュを軽く押し当てたときに少し貼り付くくらいが「適量のサイン」です。乾燥や炎症を改善させるためにも、惜しまず十分な量を使うようにしましょう。
05注意点と副作用
ヘパリン類似物質を使用する際は、症状が改善しない場合や悪化した場合には、すぐに使用を中止し、医師または薬剤師に相談することが大切です。血友病や血小板減少症、紫斑病などの出血性血液疾患があるかた、わずかな出血でも重大な影響が予想されるかたは、事前に必ず医療機関へ相談してください。
副作用としては、まれに赤み、かゆみ、発疹、腫れ、紫斑などが現れることがあります。こうした症状が出た場合はすぐに使用を中止し、症状が強い場合は医療機関を受診してください。
通常は1日1〜数回、適量を患部にやさしく塗布またはガーゼに伸ばして貼りますが、必ず指示された用法・用量を守ってください。眼に入らないよう注意し、潰瘍やびらん面には直接塗布しないようにします。
06ヘパリン類似物質で肌の悩みを解決へ
ヘパリン類似物質は、保湿・抗炎症・血行促進という3つの作用を持ち、乾燥や炎症を伴うさまざまな肌トラブルに効果が期待できます。クリームやローション、ジュレ(ジェル)、フォームなど多様な剤形があり、患部の状態や好みに合わせて選ぶことが大切です。
使用時は適量をまもり、入浴後や清潔な肌にやさしく塗布しましょう。また、持病やアレルギー歴があるかた、妊娠・授乳中のかたは事前に医師や薬剤師へ相談し、副作用の兆候があればすぐに使用を中止してください。
今日から日々のケアに取り入れて、乾燥や肌あれの悩み改善を目指しましょう。
